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研究開発課題

研究開発課題

本プロジェクトでは拠点ビジョンの実現に向けて以下の3つのターゲットを設定し、これらの達成に向けた9つの研究開発課題を設置しています。

[ターゲット1]  Society 5.0対応型バイオリソース供給サービスの実現
[ターゲット2]  社会実装化に向けたデジタルバイオ応用技術の開発
[ターゲット3]  戦略的市場開拓を促進する一気通貫型製品開発プラットフォームの実現


研究開発課題1:
未来型統合医療情報ネットワーク構築による次世代医療の開発

研究開発課題リーダー
西山 博之(筑波大学 医学医療系 教授)

 

  • 筑波大学が先導するヒト生体試料の分譲(オンデマンド型分譲)体制を発展させ、データリポジトリによりゲノム情報やオミックス情報の研究成果と連結した「付加価値のあるオンデマンド型ヒト生体試料・情報の分譲」体制と「細胞治療・再生医療等の開発にむけたヒト生体試料利用体制」を構築する。
  • 人間ドック・検診情報等と統合された全ゲノム遺伝子診断事業を開始する。
  • データコラボレーション解析技術を駆使し、複数の施設にある分散型医療情報を基に「未来型統合医療情報ネットワーク」の基盤構築を行う。
  • 他の研究開発課題と連携し、社会実装化にむけたデジタルバイオ応用技術の開発を行い、多因子疾患の病態解明や疾患予測モデルの創出を目指す。
  • 「付加価値のあるオンデマンド型ヒト生体試料・情報の分譲」体制と「細胞治療・再生医療等の開発にむけたヒト生体試料利用」体制と連動することにより、一気通貫の研究体制による製品開発と社会実装に貢献する。
  • リアルとデジタルをAIにて融合させ、新しいビジネスモデルを生み出す共創の場として自走化する「世界の伍するつくば型デジタルバイオエコノミー社会形成の国際拠点」の中心的役割を有する。

 


研究開発課題2:
バイオリソース情報の人工知能解析による未来世代の環境医学研究拠点形成

研究開発課題リーダー
中山 祥嗣(国立環境研究所環境リスク・健康研究センター次長)

 

国民を代表するコホート研究である「子どもの環境と健康に関する全国調査(エコチル調査)」の生体試料及びデータリソースを活用し、健康的な妊娠・出産・子育てを行うことができる環境を創造する未来世代のための環境医学拠点の形成を行う。

エコチル調査では、物理的・化学的・生物学的環境に加え、教育・社会経済状況、コミュニティ情報、精神ストレス、都市環境等を、経時的な変化も含めて、総合的に収集している。生体試料としては、母親の血液・尿・母乳(約10万検体)、父親血液(約5万件体)、臍帯血(約9万件体)、子どもの血液・尿・乳歯等を収集し、外因性・内因性化学物質を広く測定し、健康情報やその他の環境要因情報と合わせてデータベース化している。これら情報の人工知能(AI)解析を通して、胎児期から小児期の環境が、子どもの将来の健康に与える影響を総合的に解析する未来世代環境医学拠点の形成を行う。特に胎児期の環境を総合的に解析することにより、未来世代が健康に過ごせる環境を創造することを可能とし、発達障害や循環器疾患などの予防に寄与し、それらの疾病による経済負荷(年間数十兆円規模)の削減を行う(拠点ビジョン)。さらに、社会変革による健康増進を社会実装するため、消費者が健康的・安全かつ環境負荷の少ない消費行動をとれるようサポートするウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリを開発、展開する。

 


研究開発課題3:
生物資源とゲノム編集技術を用いたバイオインダストリー・プラットフォームの構築

研究開発課題リーダー
高橋 智(筑波大学 医学医療系トランスボーダー医学研究センター教授)

 

つくば地区には、理化学研究所バイオリソース研究センター、農業・食品産業技術研究機構、医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センターなどが集積しており、世界最大のバイオリソースを保有している。また、筑波大学トランスボーダー医学研究センターではCRISPR/Cas9を用いた新規のゲノム編集技術を開発しており、理化学研究所バイオリソースセンター、農業・食品産業技術研究機構と共同で、それらの生物資源に対するゲノム編集の共同研究を実施している。世界最大のバイオリソースから最適の生物を選択し、ゲノム編集による改変を行うことにより、それぞれの産業に最適の生物を開発し、生物を用いたデジタルバイオエコノミー国際拠点の基盤を形成する。


研究開発課題4:
Well-beingの実現を目指したAI活用による機能性農作物の超迅速育種

研究開発課題リーダー
山本(前田)万里(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

 

2030年には日本の高齢者割合は30%に達すると予測されている。平均寿命と健康寿命の差を縮めることは全世代の国民のWell-beingを実現するためにも重要な要素の一つである。「医食同源」の言葉が示すとおり、古来より食と健康には強い関連性があるとされ、経験に即して実践されてきた。近年になり、機能性成分の網羅分析、ゲノム情報に基づく育種などのバイオ技術は、幾何級数的な発展を見せている。本研究課題では、発症前の未病、特に生産性低下を招き、様々な疾病の始まりと考えられる軽度不調(Minor Health-related Complaints;MHC)に焦点をあて、MHCを改善する機能性農産物を作出することで社会問題解決に貢献する。
ターゲット1:Society5.0対応型バイオリソース供給サービスの実現に関しては、今まで実施されてきた観察研究の研究成果を活用し、MHCを改善する栄養成分・機能性成分について、農研機構が保有する遺伝資源や農産物で内食、中食の素材として有望な農産物の一斉分析を行ってターゲットとする作物を作出する。
ターゲット2:社会実装化に向けたデジタルバイオ応用技術開発に関しては、栄養・機能性成分等を付与した品種を超迅速創出するための技術開発、および開発した技術を用いた先導的品種育成を行う。そのため、農研機構が保有する国内最大の遺伝資源を活用し、作物の栄養・機能性成分等を明らかにして有用遺伝子情報を集積するとともに、本情報を活用し、AIデジタル情報技術を駆使したAIデザイン育種技術を開発する。
ターゲット3:戦略的市場開拓を促進する一気通貫型商品開発プラットフォームの実現に関しては、選抜、開発した農産物について健康機能に関するエビデンスを取得し、食品企業や総菜メーカーなどに提案する。


研究開発課題5:
革新的食薬資源機能評価系の開発・機能評価

研究開発代表者
礒田 博子(筑波大学 生命環境系 教授)

 

近年の生活習慣の変化は、5大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)患者の急増を促した。このうち、うつ症状・認知症などの精神・神経系疾患、糖尿病・メタボロームシンドロームなどの生活習慣病などに対する治療薬の開発に加え、これらの予防に対する社会的需要が高まっている。

様々な疾患に対する治療薬、予防医学の新たなシーズとして注目されているのが、天然物由来の“機能性素材”である。機能性素材を用いた創薬シーズの開発にあたっては、その多様性に加えて、開発速度が重要であるが、この両方を併せ持つ研究グループは多くない。

これらの社会的需要に応じるため、我々が持つ多種多様な機能性評価技術(バイオアッセイシステム)の活用を中心として、他課題と連携しながらデジタルバイオ技術の応用により機能性予測を行い、本研究開発課題を推進する。
具体的には、下記のように実施予定である。

  • 当研究グループが開発してきた40種類以上のバイオアッセイシステムを活用した、機能性が検証された農産物の有効成分探索とデータベース化(課題4と連携)
  • 物質変換技術により創出される高機能物質の機能性検証やAIによる機能予測システム開発と連携することで探索・開発される機能性素材の検証(課題6と連携)
  • エビデンスが確認できた機能性素材の有効性について、
    1) ヒト組織バイオバンクから提供された様々なヒト由来組織を用いた機能性評価(課題1と連携)
    2) 疾患モデルマウスなどを用いた前臨床試験
    3) ヒト臨床試験の実施による有効性の検証(課題7と連携)
  • ベンチャー企業等を通じた社会実装

また、当研究開発課題で利用するバイオアッセイシステムについても、新たに高次機能評価系を開発することで、その技術用を既存アッセイシステムに取り入れ、性能向上や対象範囲拡大を図り、より社会的ニーズに適合した革新的な機能評価系の開発を目指す。

このようにして、ボーダーレス・シームレスな大規模機能性解析のプラットフォームの構築による社会実装に向けて、戦略的市場開拓を促進する一気通貫の製品開発プラットフォームを実現する。


研究開発課題6:
Well-being社会を支える革新的食薬資源工学技術

研究開発代表者
佐藤 一彦(産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センター 研究センター長)

 

本課題では、つくば地域が持つ世界最大級のバイオリソースデータを活用し、食薬機能分子の構造、機能、およびメカニズムの相関をAIにより解析し、構造から機能を、逆に機能から構造を予測するシステムを開発する。評価系の課題とも連携し、有望な機能を持つ食薬機能分子を安価な食薬資源から抽出・変換して製造する技術を開発する。機能性食品や医薬品、ヘルスケア製品として社会実装し、ターゲット3で掲げる一気通貫型の製品開発プラットフォームを構築する。


研究開発課題7:
大規模コホートに基づく未来型統合医療情報ネットワークを用いたエビデンス創出プラットフォームによる社会実装拠点の形成

研究開発代表者
大藏 倫博
(筑波大学 体育系/テーラーメイドQOLプログラム開発研究センター 教授)

 

 

数万人レベルの大規模住民コホートと有病者の医療・看護情報データベースから成るビッグデータに基づき、デジタルサイエンスを活用することで多数のシーズに関する臨床的エビデンスを創出し、ライフスタイル介入研究により実証する。これらの実証結果から、テーラーメイドの予防・改善プログラムを開発し、ベンチャー企業の設立などにより社会実装化する仕組みを構築する。上記内容を達成するために3つの小課題を設定する。

  • 7-1大規模な“ハピネスライフ”住民コホートと有病者の医療・看護情報データベースの創設
  • 7-2デジタルサイエンスを活用した臨床的エビデンスの創出とライフスタイル介入RCT(ランダム化比較試験)による実証
  • 7-3「各種疾病リスク因子」等を有する未病者(患者)に対する予防・改善サービスの提供体制の構築(社会実装化)

研究開発課題8:
脂質コードの理解と制御を基盤とするWell-being社会に向けた次世代脂質研究拠点の形成

研究開発代表者
島野 仁(筑波大学 医学医療系 教授)

 

脂質は生命の根源的な物質であり、エネルギー栄養代謝、再生、炎症、がん、細胞ストレスなど、あらゆる生命現象に関与している。脂質は予測構造を含めると43,645種以上存在していると考えられており、これら脂質の構造と機能の多様性に局在、時間を加えたマルチモーダルな情報が、複雑かつ精巧な生命の作動原理の根幹をなしている。また脂質は、疾患においてもセントラルドグマとは一線を画する主要な病態の主軸であることが、様々な研究分野の参入によって多面的に明らかになりつつある。以上のことは、脂質研究が生命科学研究領域の発展に広く貢献するのみならず、多彩な共創を産み出す学際性を有していることを示している。

そこで我々は、本拠点ビジョンである「つくばを中核とするバイオリソースとデジタル技術を駆使した学際研究により、全世代の国民のWell-beingをサポートする社会の実現」に向けてターゲット2「社会実装化にむけたデジタルバイオ応用技術の開発」を達成するため、卓越した次世代脂質研究拠点を本中核拠点内に形成し、他の研究開発計画と連動させることで、世界最先端のバイオエコノミー社会を実現することに貢献したい。


研究開発課題9:
未来型統合医療情報ネットワークとロボット技術を駆使した感染症制御技術の開発

研究開発代表者
川口 敦史 (筑波大学 医学医療系 教授)

 

デジタルバイオ技術の応用により、COVID-19やインフルエンザ等の国民生活に甚大な影響を及ぼすウイルス感染症の病態解明や重症化予防技術の開発、及びロボット技術を駆使した新興感染症の新規検査技術を開発することで新興ウイルス感染症に対する不安を払拭し、全世代の国民がWell-beingな社会を作り出すことを目標とする。